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まい・らびりんす

三好達治

「私の猫」


私の猫はずゐぶんと齢(とし)をとつてゐるのだ

毛並みもよごれて日暮れの窓枠の上に

うつつなく消えゆく日影を惜しむでゐるのだ

蛤のやうな顔に糸をひいて

二つの眼がいつも眠つてゐるのだ

わたしの猫はずゐ分と齢をとつてゐるのだ

眠ってゐる二つの眼から銀のやうな涙をながし

日が暮れて寒さのために眼がさめると

暗くなつたあたりの風景に驚いて

自分の涙をみるくとまちがへて舐めてしまふのだ

わたしの猫はずゐ分と齢をとつてゐるのだ

(三好達治)


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